前回、「見極めよう」とする意識そのものが強すぎると、かえって応募者の本音を引き出せなくなることをお伝えしました。
今回は、その延長線上にある問題として、面接官が「マニュアル通り」に面接を進めれば進めるほど、なぜ応募者の心が離れていってしまうのかを掘り下げます。
マニュアル化は、本来「良いこと」のはずだった
面接の質を安定させるため、多くの会社ではマニュアルや進行台本を用意します。面接官によって対応にばらつきが出ないように、聞くべき項目や順番をあらかじめ決めておく。これは、属人化を防ぎ、一定水準の面接を保つという意味で、理にかなった取り組みです。
特に、面接官が複数いる会社や、面接の経験が浅い担当者がいる会社では、マニュアルがあることで、最低限のミスを防げるという安心感もあります。
実際、面接官によって質問の質にばらつきが出てしまうと、応募者ごとの評価基準がずれてしまい、後から比較検討する際にも支障が出ます。その意味で、マニュアルの存在自体は、採用活動を支える大切な土台です。
「台本通り」は、応募者にも伝わってしまう
しかし、マニュアルを「一言一句、決められた通りに読み上げるもの」として運用してしまうと、事情が変わってきます。面接官の口調が棒読みになったり、応募者の回答に対する反応が形式的になったりすると、その「台本感」は、応募者にもはっきりと伝わります。
応募者は、目の前の面接官が、自分に向けて話しているのか、それとも決められた台本を消化しているだけなのか、無意識のうちに感じ取っています。後者だと感じた瞬間、応募者の中では「この会社は、自分という個人を見ているわけではないのかもしれない」という印象が生まれます。
これは、面接官に悪気がなくても起こり得ることです。むしろ、真面目にマニュアルを守ろうとする面接官ほど、この「台本感」が強く出てしまう傾向すらあります。
マニュアルへの依存が、その場の対応力を奪う
もう一つの弊害は、マニュアルに頼りすぎることで、面接官がその場の会話に柔軟に対応する力を失っていくことです。応募者が予想外の回答をしたとき、本来であれば「それは具体的にはどういうことですか」と掘り下げる余地があります。
しかし、次の質問に進むことに意識が向いていると、こうした自然な深掘りの機会を逃してしまいます。
結果として、面接は「予定調和」のまま進行し、応募者の個性や本音に触れる場面がほとんどないまま終わってしまいます。これでは、応募者の記憶に残る面接にはなりません。時間をかけて面接を実施したにもかかわらず、応募者の記憶には「特に何も残らなかった会社」としてしか刻まれない、という状態です。
マニュアルは「骨格」であって、「台本」ではない
ここで整理しておきたいのは、マニュアルそのものが不要だという話ではない、ということです。マニュアルは、面接の「骨格」として持っておくべきものです。問題は、その骨格に血肉を通わせず、一言一句をなぞる「台本」として扱ってしまうことにあります。
骨格を頭に入れた上で、その場の応募者の反応に応じて、話す順番を変えたり、深掘りする質問を増やしたりする。この柔軟性があってこそ、マニュアルは活きたものになります。
料理のレシピに例えるなら、分量や手順という骨格は守りつつ、その日の素材の状態を見て火加減を微調整するようなものです。面接官の役割も同じで、決められた項目を押さえつつ、目の前の応募者に合わせて言葉を選び直す姿勢が求められます。
次に確認すべきこと
次回は、給与や待遇の説明だけに終始してしまうと、なぜ他社に決め手を奪われてしまうのか、その理由を掘り下げていきます。
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