前回、マニュアル通りに面接を進めることが、かえって応募者の心を離れさせてしまう構造を見てきました。
今回は、面接の中でも特に重要な場面、「給与・待遇の説明」といった条件面に焦点を当て、なぜこの説明だけに終始してしまうと、他社に決め手を奪われてしまうのかを掘り下げます。
「条件の説明」は、避けて通れない
面接では、給与・勤務時間・休日・福利厚生といった、いわゆる「条件」の説明が必ず行われます。応募者にとっても、生活に直結する重要な情報ですから、正確に伝えることは欠かせません。
問題は、この「条件の説明」が、面接の中で異様に重い比重を占めてしまうケースがあることです。求人票に書いてある内容を、面接の場でもう一度読み上げるように説明し、それで会社説明が終わってしまう。
こうした面接は、決して珍しくありません。時間にして10分程度で終わる会社説明の中身が、求人票の再確認だけで埋まってしまっている、というケースを見かけることも少なくありません。
「条件」は、比較されると弱い
ここで思い出していただきたいのは、応募者は多くの場合、複数の会社を並行して受けている、という現実です。条件面での説明に終始した面接は、応募者の頭の中で、他社の条件と横並びで比較される対象になります。
給与はA社の方が高い、休日数はB社の方が多い -条件だけで比較されると、中小企業は不利な立場に置かれやすいことは、これまでの回でもお伝えしてきた通りです。
条件の説明だけで面接を終えてしまうと、応募者にとって、この会社を選ぶ理由は「条件が良ければ」という一点に絞られてしまいます。逆に言えば、条件で見劣りする瞬間、選ばれる理由がなくなってしまうのです。
表計算ソフトの一覧表のように、複数社の条件が横に並べられ、機械的に比較される対象になってしまうということです。
条件の説明の「その先」が抜け落ちている
一方、辞退されにくい会社の面接では、条件の説明はあくまで前提として押さえた上で、その先の話に時間が割かれています。
- なぜこの条件でこの仕事を募集しているのか。
- この会社で働くことで、どんな経験や成長が得られるのか。
- 社長や現場の人間が、どんな想いでこの事業に取り組んでいるのか。
こうした「条件の背景にある物語」こそが、他社との条件比較から一歩抜け出し、応募者の心に残る要素になります。条件は横並びで比較されますが、物語は比較のしようがありません。
その会社にしかない、固有のものだからです。
同じ「月給25万円」という数字でも、その裏にある経緯や想いを知っているかどうかで、応募者にとっての重みはまったく違うものになります。
募集背景を語ることが、決め手になる
特に効果的なのが、「なぜ今回この募集をすることになったのか」という募集背景を、具体的に語ることです。
- 事業拡大のためなのか
- 欠員によるものなのか
- 新しい挑戦のためなのか
この背景を率直に伝えることで、応募者は自分がその会社でどんな役割を期待されているのかを、より具体的にイメージできるようになります。
条件の説明だけでは伝わらない、「あなたに来てほしい理由」がここで初めて言葉になります。
この一言があるかないかで、応募者が面接後に抱く印象は大きく変わってきます。給与明細には書けない情報だからこそ、面接という対面の場で伝える価値があるのです。
書類上の数字だけを見比べて決める応募者もいますが、多くの応募者は、それだけでは決めきれない不安を抱えたまま最終判断をしています。その不安に寄り添う言葉があるかどうかが、最後の一押しになります。
次に確認すべきこと
次回は、第2章の最後として、同じ条件・同じ職種であるにもかかわらず、辞退率に大きな差が出てしまう会社があるのはなぜか、その正体をまとめて掘り下げていきます。
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