前回、一般的な面接のコツを「点」で実践しても、「線」としての体験にならないことをお伝えしました。
今回は、その象徴的な現象として、「質問リストをしっかり用意して面接に臨んでいるのに、良い人材ほど去っていく」という状況を掘り下げます。
真面目な会社ほど、陥りやすい罠
意外に思われるかもしれませんが、この現象は「いい加減な面接をしている会社」よりも、むしろ「真面目に採用に取り組んでいる会社」で起きやすい傾向があります。
採用に力を入れようと、経営者や採用担当者が本やセミナーで学び、「これを聞くべき」「あれも確認すべき」と質問項目を増やしていく。過去の失敗を踏まえて「次はこれも聞いておこう」と、リストはどんどん充実していきます。真面目に改善しようとする姿勢そのものは、決して悪いことではありません。
質問リストが「尋問」に変わる瞬間
しかし、質問項目が増えれば増えるほど、面接の時間配分の中で、会話としての「間」や「余白」が失われていきます。限られた60分の中で、用意した質問をすべて消化しようとすると、面接官はどうしても「次の質問、次の質問」と、進行することに意識が向いてしまいます。
応募者からすると、これは会話ではなく、次々と質問が飛んでくる「尋問」のように感じられます。一つひとつの質問には悪意がなくても、テンポよく畳みかけられることで、応募者は身構え、当たり障りのない回答に終始するようになります。
結果として、面接官は「たくさん質問をしたのに、応募者の本当の人柄が全然分からなかった」という状態で面接を終えることになります。
たとえば、10個の質問項目を60分に詰め込むと、単純計算で1問あたり6分しか使えません。挨拶や会社説明の時間を差し引けば、実質はさらに短くなります。この時間感覚の中では、面接官も無意識に「早く次へ」という焦りを抱えながら質問することになり、その焦りは表情や口調を通じて、応募者にも伝わってしまいます。
「優秀な人材」ほど、この違和感に敏感である
さらに厄介なのは、この「尋問のような雰囲気」に対して、実力があり選択肢を多く持つ応募者ほど敏感に反応する、という点です。転職市場で複数の会社から声がかかるような人材は、面接という場を通じて、その会社の社風や、働く人たちの人間性を見抜こうとしています。
質問攻めのような面接を受けた応募者は、「この会社は、人を評価することにしか関心がないのかもしれない」「入社後も、こんな管理的な雰囲気なのだろうか」と感じ取ります。そして、他に選べる会社があるなら、そちらを選ぶという判断につながりやすくなります。
皮肉なことに、丁寧に質問リストを準備するほど、優秀な人材ほど遠ざかってしまうという構造が生まれてしまうのです。
質問リストが悪いのではなく、「使い方」が問題
ここで誤解してほしくないのは、質問リストそのものが悪いわけではない、ということです。準備をせずに面接に臨めば、それはそれで場当たり的になり、聞き漏らしも増えます。
問題は、質問リストを「すべて消化すべきノルマ」として扱ってしまうことにあります。用意した質問の中から、その場の会話の流れに応じて必要なものを選び、時には脱線した雑談も許容する。
この「余白を残す」という姿勢があるかどうかが、質問リストを「尋問」にするか「対話」にするかを分けています。極端に言えば、10個用意した質問のうち、実際に使うのは6〜7個で構わない、というくらいの余裕を持っておくことが、結果的に応募者の本音を引き出すことにつながります。
次に確認すべきこと
次回は、「見極めよう」とする意識そのものが強すぎる面接官が、なぜかえって応募者から選ばれなくなってしまうのか、その理由をさらに掘り下げていきます。
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