前回、面接官の自己開示が、応募者との信頼関係の「先払い」になることを見てきました。
今回は、その信頼関係の上に成り立つ次の要素、応募者のビジョン・目標にフォーカスすると、面接に何が起きるのかを掘り下げます。
なぜ「ビジョン」にまで踏み込む必要があるのか
一般的な面接では、応募者に対して、これまでの経歴やスキル、志望動機を確認することが中心になります。
しかし、辞退されない面接では、それだけでは終わりません。応募者が今後どうなっていきたいのか、5年後・10年後にどんな自分でありたいのかという、将来のビジョンにまで踏み込んで耳を傾けます。
一見、採用の合否判断には直接関係なさそうに思えるこの質問が、実は面接全体の印象を大きく左右します。「ビジョン」「目標」という言葉が堅苦しく感じられる応募者には、「3年後、どんな自分になっていたらいいなと思いますか」「資格など、取りたいものはありますか」といった、答えやすい聞き方に言い換えることも有効です。
「評価されている」から「応援されている」への転換
経歴やスキルの確認は、どうしても「評価する側・される側」という構図になりがちです。
一方、将来のビジョンを聞かれる場面では、応募者の中で少し違う感覚が生まれます。「この人は、私がこの先どうなりたいかに、興味を持ってくれている」という感覚です。
この感覚が生まれた瞬間、応募者にとって面接官は、単なる評価者ではなく、自分の将来を一緒に考えてくれる存在に近づきます。「評価されている」という緊張感から、「応援されている」という安心感への転換が起きるのです。
ビジョンを聞くことは、応募者の本音を引き出すことでもある
将来のビジョンや目標は、事前に準備された回答が通用しにくい質問です。志望動機や自己PRであれば、多くの応募者は事前に模範解答を用意してきます。しかし、「5年後、どんな自分になっていたいですか」といった問いには、とっさに答えを用意しづらいものです。
だからこそ、ここでの回答には、応募者の本音や、これまであまり言語化してこなかった価値観がにじみ出やすくなります。
沈黙が生まれても焦らず、考える時間を与えることが大切です。この沈黙の時間こそ、応募者が本音と向き合っている時間だからです。急かしてしまうと、せっかく引き出せるはずだった本音が、また模範解答の中に引っ込んでしまいます。
ビジョンへの共感が、決め手になる
応募者が語った将来のビジョンに対し、面接官がどう反応するかも重要です。
「素晴らしいですね」という表面的な評価で終わらせるのではなく、そのビジョンに至った背景や、今どんな努力をしているのかを、さらに深掘りして聞いていく。
たとえば、「財務のトップになりたい」と語る応募者がいたとして、実際に簿記の勉強を始めているかどうかを確認してみる。こうした問いかけによって、その目標がその場しのぎのものなのか、本気で行動に移されているものなのかが見えてきます。
そして最終的に、「うちの会社であれば、そのビジョンに近づけると思います」という言葉を伝えられるかどうかが、応募者の心を動かす決め手になります。特に、経営者自身がこの共感を言葉にできると、応募者にとっての説得力は一段と増します。
中小企業であれば、社長が一次面接から同席し、応募者の目標に対して「一緒に叶えてあげたい」と本気で思えるかどうかも、大きな分かれ目になります。
次に確認すべきこと
次回は、面接の最後、「最後の印象」が内定承諾率を左右する理由について掘り下げていきます。
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