ここからは最終章、第5章に入ります。第4章までで「選ばれる面接」の考え方と、その具体的な設計方法を見てきました。
第5章では、視点を未来に移し、このまま一般的な面接のやり方を続けた場合、この先どうなっていくのかを掘り下げます。
「変わらないこと」のリスクは、見えにくい
「選ばれる面接」への転換を先延ばしにする理由として、最も多いのは「今すぐ困っているわけではないから」というものです。しかし、このまま一般的な面接のやり方、つまり見極めだけに偏った面接、マニュアルを台本のように読み上げる面接、条件の説明だけで終わる面接を続けていった場合、何が起きるのでしょうか。
変化を先延ばしにすることのリスクは、目に見える形ではっきりと現れないため、つい後回しにされがちです。しかし、じわじわと確実に、採用活動全体に影響を及ぼしていきます。体調不良のように、痛みが出てから気づいたときには、すでに進行している、というケースも少なくありません。
辞退が「当たり前」になっていく
まず起きるのは、辞退という現象そのものへの感覚の麻痺です。最初のうちは「今回はたまたま縁がなかった」と捉えていた辞退が、繰り返されるうちに「うちの会社では、これくらいの辞退は仕方がないものだ」という諦めに変わっていきます。
この諦めが定着してしまうと、面接のやり方を見直そうという発想自体が、経営者や採用担当者の中から消えていきます。改善のきっかけを、自ら手放してしまうことになるのです。周囲の経営者仲間も似たような状況であれば、なおさら「業界的にそういうものだ」という空気に流されやすくなります。
採用コストが、じわじわと積み上がる
辞退が続くということは、その都度、求人媒体への出稿や、選考にかけた時間や労力が、成果につながらないまま費やされ続けるということです。一件一件の損失は小さく見えても、これが半年、一年と積み重なると、決して小さくない金額になっていきます。
さらに、応募者一人あたりの重みが大きい中小企業にとっては、金銭的なコスト以上に、採用担当者の時間や精神的な負担という、目に見えにくいコストも積み重なっていきます。面接のたびに気持ちを立て直す負担は、数字には表れませんが、確実に採用担当者を消耗させていきます。
良い人材ほど、他社に流れ続ける
これまでの章で見てきた通り、面接の質に敏感なのは、実力があり、選択肢を多く持つ人材です。一般的な面接のやり方を続けている限り、こうした人材ほど他社に流れていく構造は変わりません。
結果として、応募は来ても、本当に採用したい人材にはなかなか出会えない、という状態が続きます。採用計画そのものが、いつまで経っても計画通りに進まなくなってしまいます。人手不足が慢性化している業種であれば、この状態が事業の成長スピードそのものを制約してしまうことにもつながりかねません。
気づいたときが、変え時である
このように、変わらないことのリスクは、静かに、しかし確実に積み重なっていきます。逆に言えば、今このタイミングで気づき、面接のやり方を見直すことができれば、これから先の採用活動は、大きく変わっていく可能性があるということでもあります。
危機感を強く持つ必要はありませんが、「今のままでいい」と思い込んでしまうことだけは、避けたいところです。
次に確認すべきこと
次回は、逆に「選ばれる面接」に切り替えた場合、辞退率が実際にどう変わっていくのかを掘り下げていきます。
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